Snowflakes

お茶会日記

ひとひらの雪は手にのると、水になって消えてしまう。はかないけれどその美しさは格別です。
ささやかに燃え尽きるようないのちの灯火、そんな大切なお茶の時間を過ごしていきたいと思っています。
The snow on the palm disappears immediately after becoming water.Although it is ephemeral, its beauty is amazing.
I hope to spend hours of such precious Chanoyu, as a light of life as burned out in modest way.

Tasmania: Alice's Wonderland #2

こんにちは、宗雪です。

東京は桜が満開ですが、葉桜にならないうちにオーストラリアはタスマニアで開催した「不思議の国のアリス茶会」のご報告です。
 
そもそもタスマニアってどこ?とお茶会準備の様子はこちら
会場の「Frangipani Fabrics」の3代目、Heidi(ハイディ)ちゃんは雛祭りの生地で作ったスカートで出迎えてくれました。
 
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生地屋さんの二階の普段はソーイング教室をやってるイベントスペースが、今回のお茶会の会場です。
 
暖炉もあって、そこをまず床の間に見立て、花が咲いた後のユリをかざりました。秋田の森吉山でも、ヤマユリが咲いた後のこんな様子を見たことがありますが、こんな鮮やかでジューシーな感じではなかった。とてもエキゾチック。
 
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そして、ユリはネコを殺します!
Lilies kills cats!
 
そうです、ユリの花はネコにとって猛毒で、花粉を食べただけで腎臓の働きが止まり尿毒症からやがて死に至るとされています。(猫を飼ってる方はくれぐれもご注意! 私もユリの花は大好きでしたが飼い猫のために長らく飾れませんでした)
 
アリスと言えばチェシャ猫のニヤニヤ笑いを思い浮かべる方は多いのではないかと思われます。
 
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もう床の花はキマリでしょう!
しかし、マニアック過ぎるユリとネコの関わりのストーリー、そしてそもそもこのエキゾチックな植物がユリだと判別できるのかどうか。明らかに自己満足でしかありませんが、この花(の咲いた後)の美しさに心打たれてしまい、「不思議の国のアリス」茶会の床の花はユリ(花が咲いた後)に決まりました。

で、「お軸」ですが、それは鴻池朋子画伯の筆になります。

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これは「鳥」です!
象形文字の鳥。
確か、鳥は天使と同じように大地と空を繋ぐ存在、ということで描かれたもの。詳しくは、お茶会の最後に鴻池さんからのスピーチで語られたので、また後ほど。

床の花が決まり、軸が描かれ、お茶碗は「アリスがテーマの茶会」とあらかじめ参加者の方々に伝えていただき各人がカフェオレボールのようなものを持参していただくことになっています。

お菓子は寒天と小豆と食紅を使ってトランプカードを模することになりました。ハートのクイーンの登場です!
「寒天文化」を有するハンズクラフト秋田代表の東海林さんにキッチン付きのホテルで試行錯誤しながら作っていただきました。

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そして、席順はいらした順に「好きなアリスのキャラクター」を選んでいただき決めました。

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それから、席に着く前に、タスマニアの花々をそれぞれ窓辺に生けていただく花寄せを実施。こちらは、展示の「物語るテーブルランナー」の制作に直接関わっていなく席に入られない見学の方にも参加していただきました。フランジパニの2代目オブニーさんと3代目のハイジちゃんもガラスのコップやボタン入れに自分が選んだ花を生けていきます。

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タスマニアの草原が茶室に出現!

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利休七則に「花は野にあるように」と言いますが、野の花のエネルギーが満ちてきたようで、とても素敵な瞬間でした。(床の間のユリのことはこの後すっかり忘れてしまい。。。他にも緊張していたせいかいろいろなことを忘れてしまうのですが。。)

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お点前は茶箱の「雪」にしました。オーストラリアは夏から秋に移りゆくところでしたが、私の「宗雪」という名前の由来「生まれた時に雪が降っていたので、両親は雪と名付けようとしたけれど字画が悪かったので由美に変えた。お茶名をいただく時にその話を先生が覚えていてくださって雪を賜った」という話にも繋がるので。

受付で「アリス」を選んで正客に座ったDanielle が「私が生まれた日も雪が降っていたのよ」という話をしてくれて場がリラックスしてとても良かったです。

ダニエルは、前日「お茶会を守ってくれる」2人の人形を作って来てくれた女性。とてもあたたかく機転もきいてエネルギーに満ち溢れ、お正客としてもみなをリードしてくれそうな頼もしい存在でした。

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初めに「一期一会」という話をしました。タスマニアのフランジパニ・ファブリックスというこの場所で、Danielle、Dianne、Jennyfer、Jenny、Gillian、Shirley、Elizabeth、そして鴻池さん、村井さん、東海林さん、私というメンバーが再び集まるという機会はもう一生ないかもしれない。だからお互い尊敬の念をもって、充実したひと時を過ごすのがこの会の目的である。お正客が招かれた客の代表として問答をする、というルールもそのためにある。

どのくらい伝わったかわかりませんが、当日早起きして手帳に書いた原稿。

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その前の時間で「物語るテーブルランナー」の各自制作した作品のプレゼンテーションを行なっていて「さすが西洋人みんな喋りすぎw」って感じだったのが、私のつたない英語がさらに異界感を増させたのかもしれないけど、タスマニアの明るい光の中で異様な緊張感。

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で、あれほど練ったつもりだったストーリー、アリスと異界への架け橋となるお菓子の話をしようとして、思いっきり先にお菓子を出していないことに気がつきました。

あとから聞いた鴻池さんの話によると、「黒田さんがいきなり笑い出して何が起こったのかと思った」

そしてあまりにみなが緊張していてお菓子の写真も誰ひとり撮っていなかったので、こちらは思いっきり引き伸ばしたお菓子の写真。

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透明な寒天の中に、ハート型もしくはスペード型にクッキーの抜き型で抜いた小豆が入ったものです。前日にアジアの食材が揃っている食料品店でアンの缶詰を調達し、アンと寒天の割合などを吟味して作成した東海林さん渾身の作。

「お菓子忘れてました!」と鴻池さんはじめ総勢でお菓子を配り、一気に緊張感はとけ、なごやかにお茶会は進んでいきました。

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さらに続く