Snowflakes

お茶会日記

ひとひらの雪は手にのると、水になって消えてしまう。はかないけれどその美しさは格別です。
ささやかに燃え尽きるようないのちの灯火、そんな大切なお茶の時間を過ごしていきたいと思っています。
The snow on the palm disappears immediately after becoming water.Although it is ephemeral, its beauty is amazing.
I hope to spend hours of such precious Chanoyu, as a light of life as burned out in modest way.

北鎌倉: 南窓 宗雪 ジャングル月見茶会2 #1

「戦後最強」と言われた台風19号の影響で開催すら危ぶまれた北鎌倉での「ジャングル茶会2」も無事終了しました。陛下の即位の礼も無事執り行われ、これで天災も少しは収まると良いなー

 

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思えば北鎌倉・宝庵にて初めてのお茶会を開いて1年。

お茶名を取った南窓さん(織田流煎茶)とわたくし宗雪(裏千家)で「いっしょに茶会を開こう!」と茶席を探すこと1年半。お客様に「Welcome To The Jungle!」(by Guns N' Rpses )と言ってみたいだけで「ジャングル茶会を開けそうなところ」を考えていたのですが都内ではなかなか見つからず、たまたま鎌倉彫の後藤久慶さんのワークショップでお茶を点てさせていただいた帰りに立ち寄った北鎌倉は浄智寺で、1カ月前に一般開放されたばかりのお茶室「宝庵」に出会ったのでした。

鎌倉で江戸千家のお茶をお稽古している中川さんと1枠だけ残っていたシーズン会員に勢いで申し込み、年に4回春夏秋冬のお茶会を開けることに。

このすばらしいお茶室について、詳しくはこちらで。

yumi-kuroda.hateblo.jp

 

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1年目の1回目は新月だったけど、今回は満月。満月といえばオオカミだろ!

ということで懇意にしていただいている鴻池朋子さんのオオカミと少女のクロッキーを2幅お借りして2席を設え、南窓さんによる織田流お煎茶の1席でお客様をお迎えすることに。

 

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カードのデザインは2度目の世界一周から帰国したばかりの瀬津勇人さん。

時間もなかったので、去年のものから少し変えてもらっただけなのですが、白い月が清く令和っぽい。

前回の15号では浄智寺横の道が倒木で封鎖され、宝庵のスタッフとボランティアの方々のおかげでようやく復旧したところへの今回の19号来襲。日本はやっぱりゴジラの国だなぁ、それもお茶かなぁ、と変な諦念が生まれかけていましたが、幸い被害は最小限。

 

茶室まわりの野分あとのちょっと荒涼とした感じは、なんだか21世紀美術館で鴻池さんと初めてやったオオカミ茶会を思い出しました。

(その話は長くなるのでまた別の機会にいたします。)

 

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朝8時に宝庵に着くと、中川さんがどこからか取ってきてくれたススキとセイタカアワダチソウがどっさり置いてありました、

お茶に使える草木がふんだんにあって、本当に鎌倉はうらやましい。

今日はお客様に「歌を短冊に書いてもらいます」とあらかじめお願いしてあるので、浄智寺の脇を宝庵に上って来る間にも、山にあるモミジ(まだ紅葉前)や曼珠沙華、返り咲いている紫陽花などに句趣を感じていただけると良いなと思いました。

 

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此の道や 行人なしに 秋の暮れ  芭蕉

 

もともとは『榊莫山家の茶懐石のおもてなし』を読んでいて、莫山さんが芭蕉への思いを筆に託した六曲の屏風から、みなさんに句か歌を寄せ書きしていただこうと思いついたことでした。春は花寄せ、夏は七夕の願い事と、お客様みなでお席を作っていくのは本当に楽しいです。

 

そして、こちらが実際に書いていただいた短冊を水屋で屏風に仕立てたもの。

思いつかなかったお客様には好きな句を選んでいただこうと芭蕉の句集も持って来ていたのですが、いらぬ心配でした。

みなさんの歌のすばらしいこと!

 

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密林に かぐやと過ぐす 月夜かな   寅偏

 

野分後の 自宅で食後の ホットタブ

日々の幸せ しみいりつつ     久恵

 

松島の さざ波ながめ 月夜酒     うさぎ

 

金木犀 香る月夜に 無事祈る   美

 

ああ、宝庵の庭には今年ようやく咲いた金木犀の香りが満ちていました!

歌を書いていただく短冊を作っていたその夜、私の自宅では台風19号の風雨で多摩川の水量はレベル4に達し、携帯の避難警告が数分ごとに鳴り響き、遂には明かりがフッと消え。。。

昼間のうちに用意しておけば良かった!

とものすごく後悔したものでした。

そしてやはりとてもこわかった。。。

今も避難所にいらっしゃる方はさぞ心細いことでしょう。

 

「ホットタブ」の歌を詠んだ次客の久恵さんは、目黒川の氾濫に備えて役所に猫といっしょに避難していました。無事帰宅して湯船に浸かった時は本当にホットしたことでしょう。(もしやシャレか?)

三客の白金台の「うさぎ」さんは、ちょうど松島に旅したばかりだったそうです。そしてとてもお酒が強いです(笑)

正客の寅偏さんは日頃から句を詠んでいる方で、「ジャングル茶会」と掛けてさすがの巧さです。

 みなさん、自分のご体験と気持ちが入っていてとても良いなー としみじみ感じ入りました。

 

折にふれて歌を詠んでいた万葉の昔や、戦争の前までの文人たちが生きていた時代がうらやましい。

学徒出陣の学生たちも多くの歌を遺しています。

こんな風にいつも歌を伴にしていれば、なんでもない日常も一瞬一瞬が光の粒みたいに見えてきますね。

 

「亭主側もぜひ詠んでください!」

と言われて「では後ほど!」と忙しさにまぎれさせ最後まで誤魔化してしまいましたが。。。

 

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つづきは #2 で。