Tasmania: Alice's Wonderland #1
こんにちは。宗雪と申します。アーティストの鴻池朋子さんの金沢21世紀美術館での一風変わったお茶会のお手伝いをさせていただいて以来、お茶室を離れたいろいろな空間で、多少調子っぱずれなお茶会を開いています。いろいろな場所で、一期一会のかけがえのないひと時を過ごせればと思っています。
今回は2月にタスマニアで開いた「アリスの不思議の国」茶会のご報告。
え、タスマニアってどこ?
と思われる方も多いでしょう。私も最初はマダガスカルとあまり区別がついていませんでした。お恥ずかしい。
有袋類が生き延びている本土ですら失われた生き物が暮らしているタスマニア。ジュラ紀にできた地形がまだ残るという非常にワイルドな自然が広がる土地で、植物も南極ブナなどまったく見たことのない種類が街中でも見られて「世界の果てに来た」感が随所に味わえます。
でも、首都のホバートは英国植民地の面影をこれまた残していてとても素敵。
手入れされた庭庭には色とりどりの薔薇が咲き誇り、南半球は夏ですけれど、朝晩は涼しくハワイに似たとても快適な気候でした。
タスマニア案内はこれくらいにして、本題のお茶会の話。
もともとは鴻池朋子さんの「物語るテーブルランナー」プロジェクトが、秋田から青森を経由して太平洋の南はるかタスマニアへと種を飛ばし「Storytelling Tablerunner」として始まったのが1年前。神奈川大学の村井まや子さんが、タスマニア大学と共同でその土地の人たちの子供の頃や地域に伝わる物語を採取し、実際に針と糸を使ってそのストーリーをテーブルランナーとして生地に定着させていく試みが1年経って形となり、作品の展示会が開催される運びとなりました。
その展示会のイベントのひとつとして、テーブルランナーを制作された方たちと関係者をご招待して「日本式ティーセレモニー」を開く、というのが今回のアリスのお茶会の趣旨。
アリスをテーマに選んだのは、アリスがウサギを追って穴に落ちてしまった後、「Drink Me」とラベルに書いてあるビンの中の液体を飲むことで身体が縮んで小さな扉の向こうの「不思議な国」に入れるようになった、という冒頭からして「異界に入る」お茶会を象徴しているように思えたからです。ルイス・キャロルは英国人ですし、植民地であったタスマニアの人たちが知らないわけがない。これはお茶の世界観をわかっていただくには最適だ!と、自分の名案ぶりに小躍りしましたが、その考えが甘かったことは後でわかります。
会場はホバートのメインストリートであるエリザベスストリートに位置するその名も「プルメリア生地店」いつまでたっても覚えられない英語では「frangipani fabrics」という地域の手芸マニアの情報交換基地としての中核を担うとっても素敵な店舗の二階。
一階は店舗、二階はソーイング教室を開いたりするイベントスペースとなっています。
煉瓦造りの外観に内装もとてもシンプルで非常に趣味の良い空間、窓から差し込むタスマニアの夏の光、眼下には咲き乱れる花々。ここは楽園か!と気持ちアガリまくりで、展示会とお茶会の準備もテンション高く進みます。
手前はオーナーの娘さんでこのイベントの立役者、ブライオニーさん。植物の芽吹きを意味するという素敵な名前ですが、英国の女性にはよくあるそう。知らなかった。
お茶に使うお花をその辺から集めてくださいました。きれい!でも少し大振りかなぁ。
お軸には、鴻池さんに窓にチョークで絵を描いていただきました。贅沢!
なんと言っても、この後帰国してから「芸術選奨 文部科学大臣賞 」を芸術部門で受賞するのです。今年の映画部門はシン・ゴジラの庵野秀明さん、脚本部門は宮藤官九郎さんという豪華ラインナップ。この窓枠ごと持ち帰るべきだった? 笑
脱線してさらに前置きが長くなってまいりましたが、本番は次回に続きます!