Snowflakes

お茶会日記

ひとひらの雪は手にのると、水になって消えてしまう。はかないけれどその美しさは格別です。
ささやかに燃え尽きるようないのちの灯火、そんな大切なお茶の時間を過ごしていきたいと思っています。
The snow on the palm disappears immediately after becoming water.Although it is ephemeral, its beauty is amazing.
I hope to spend hours of such precious Chanoyu, as a light of life as burned out in modest way.

北鎌倉:久慶 宗雪 北鎌倉 野あそび茶会 #3

北鎌倉・宝庵で4月27日(土)取り行った野あそび茶会。

花あそび(四畳半)野点(雨で常安軒の八畳間)に続き、オプションで一畳台目の夢想庵でのお濃茶を差し上げました。

 

あ、その前に「野あそび」に欠かせないお弁当です!

宝庵のさらに上にある「宝の庭」スエ亭さんの「野摘み弁当」をご用意しました。お椀はコゴミと手鞠葛。

 

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前回は「あったか茶会」でお菓子からお料理まですべて温かいものをご用意しましたが、今回はもしかしたら少し暑いくらいかもしれない。。と思って野あそびに合わせてお弁当にしたのですが、雨の上に肌寒く、お客様にはちょっと申し訳なかったです。

利久七則「降らぬとも雨の用意」が身にしみます。。

 

お濃茶ですが、宝庵まで15歩くらいを傘で移動いただきます。

足元は厄介ですが、新緑が雨に濡れてみずみずしい。

 

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お軸は、引き続き松原さんによる、紫陽花の枝で作っていただいたリースです。

円相に見立ててみたのですが、いかがでしょう?

夢想庵は、京都の高台寺の遺芳庵の逆写しで、大きな円窓が特徴です。

禅では円は悟りや宇宙、そして円窓は自分の心を映す鏡とされます。

この狭い茶室でひとり雨の日にぼけっと過ごすのも良いなぁ、と思いました。

 

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床のお花も松原さん。朝の宝庵の庭で摘んだというツツジがとても素敵です。後ろのシュッとしてるのはハニーサックルということ。

また、お持ちいただいた花卉がとても素敵なのですが、初期の李朝だそうです。京都の北天満宮の骨董市での文字通り「掘り出し物」。

今回はこのご馳走の花入に合わせて、茶入、水差し、茶碗ともに萩焼を選びました。

 

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香合は京都 妙見窯の今岡三四郎さんの色絵「犬鷹」です。

「鳩に見える」という方もいらっしゃいましたが、鷹狩のイメージでどうぞ。

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お菓子は、初夏らしく美濃忠さんの「初がつを」

実は、手作りのツクシのお菓子とこの初かつをに感激して、私は今の先生への入門を決めたのです。お菓子に釣られて。。。というのもなんですが、毎年早春の九州でツクシを摘んで手作りされているという本来のおもてなしの心にも、本で見たことしかなかった「初かつを」を惜しみなくお稽古に出されるというこだわりにも、心を動かされました。美味しい和菓子を食べられる。。。という動機で茶道部に入部した高校生時代と何も変わってませんが。笑

 

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お点前は、同じ社中の片桐さんにほぼお願いしました。どうもありがとう!

 

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受付を手伝ってくださった後藤さんの奥様、香織さん、下足番をしてくれた次男のあきのりくん、茶箱や菓子器、そして鎌倉彫全般の説明を行ってくださった後藤久慶さん、すべてのお花を準備し生けてくださった松原さん、 竹の切り出しから製作まで行ってくださった中川さん、そして社中の金山さん、片桐さん、鵜邊さん、期せぬ大雨とそして二人も来られなくなったスタッフの欠員をカバーする働きで、本当にありがとうございました。

 

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最後になりましたが、この唯一無二の宝庵というすばらしい場所を提供くださる、宝庵スタッフの皆様にあらためて感謝します。

無事に「令和」は開けたかな?

また、七夕の星茶会でお会いしましょう!

 

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北鎌倉:久慶 宗雪 北鎌倉 野あそび茶会 #2

あけまして令和です!

北鎌倉・宝庵での「野あそび茶会」、8畳間での野点の前に、4畳半での「花あそび」を行いました。

 

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こちら、通称「花月」と呼ばれる「七事式」のひとつ、「廻り花之式」を模したものです。

通常「花月札」という順番や役割を決める道具を使うのですが、手荷物の中に見つからなかったため orz、急遽、庭の落ち葉の裏に「月・花・一・二・三」の文字を書いて札の代わりとし、花を入れる順番を決めていただきました。

 

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「折据」の代わりは桜の木の小さな器。

なんだか山でタヌキかキツネに化かされてる感じで、かえって良かったかも。

お茶ってルール遵守というより、むしろ臨機応変を常に求められているなー  とあらためて思いました。

 

小さな床の間には、なな艸の松原尚世さんが一か月ほど前から北鎌倉の野の花で作ってくださったリース。去年展示会で拝見してとても素敵だったのでお願いしました。

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使われているのは、クリスマスローズハハコグサ、利休梅、馬酔木、貝母、ニリンソウ、キブシ、ヨモギフキノトウセイタカアワダチソウ(葉)

とのことです。とても豪華な春のブーケ!

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そして、みなさんに生けていただく花々はやはり松原さんにこのあたりで採取いただいた、野の花々です。

浄智寺さん、ありがとうございます)

 

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花器は、ツクシを摘んだ台峰で、こちらも保全会に許可をいただいて1週間前に切り出した青竹。鎌倉彫の木地師でもある中川創介さんに、花を生ける穴を開けて、支え台をつけていただきました。

 

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私は穴はシンプルな方がよいと思ったのだけど、「いろんな形がある方が面白いんじゃないか」ということで、お任せしてひさご型とか三角とか。

意外に「楽しい」と好評で、人の意見は聞くもんだなー 笑

 

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この四畳半では、お花を生ける前に、待合としてやはり台峰に自生するシナモンの木の根っこをスライスしたものをお湯に入れてお出ししました。

台峰の森を守る案内人、80歳(推定)のかっちゃんこと大峰緑地保全会の中核メンバーである川上克己さんは、子供時代にみんなでオヤツとしてこのシナモンの根っ子を齧ってたとのこと。

お湯に入れるとみるみるエキスが溶け出して香り、スライスを齧るとシナモンの刺激とほのかな甘みがあります。

北鎌倉の野遊び、感じていただけたらと思います。

汲み出しは、手持ちのしだれ桜です。南蛮船みたいな絵が、なんとなく春から夏へと季節をつないでくれるイメージで選びました。

 

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この「みんなで花を生ける」というミニイベントは、タスマニアでアリスのお茶会を開いたときに思いついたものです。

「七事式」の中で私がお稽古していて楽しいのが、「三友之式」(裏千家十三代圓能斎お好み)「廻り花之式」で順番にお花を生けていくときです。だんだん床の間に野山の景色ができてきてワクワクします。

花を生ける、というのはとても簡単。でも、考え始めるとこれほど難しいものはありません。その合間にあるのが、とりあえず用意された花々の中で自分で生けたい花を選び、場所を選び、景色を考えて入れる、というこの「あそび」です。(お茶だと「修練」なのですが)

タスマニアのお茶会では、ホバートの街中の手芸店の二階に、忽然とオーストラリアのワイルドな草原があらわれたようで、とても感動しました。

 

今回、北鎌倉の春の野はあらわれたでしょうか?

 

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#オプションの夢想庵でのお濃茶席につづきます

 

 

 

 

 

 

 

 

北鎌倉:久慶 宗雪 北鎌倉 野遊び茶会 #1

今日は平成最後の日!

みなさま10連休どうお過ごしでしょう?

 

GW最初の日、北鎌倉の浄智寺山道横を上がった突き当たりの手前「宝庵」にて、平成最後のお茶会を開かせていただきました。

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いざ、鎌倉へ!
晩春から初夏へ、平成から新元号へ。
散る花、萌える野山、ゆく春を惜しみながら
鎌倉仏師29世孫、後藤久慶さんの
新作茶箱をお披露目します。
夏の初めの野で遊びましょ。

後藤久慶 黒田宗雪 雪片会
プランツ監修:松原尚世

 

冒頭は一か月ほど前、このお茶会の準備でツクシを摘むために北鎌倉の「台峰」を訪れた際に撮った写真。

台峰緑地保存会の方々がヤブを切り開いてくださったおかげで、子供たちが遊べる広場ができています。子供たちはここを「見晴らし」と呼んでいるそうです。

四月の終わりから五月にかけて山桜が咲き、見晴らしから眺める山々は様々な新緑と薄いピンクに彩られる、その一年でいちばん美しい季節に北鎌倉で野遊びを。。

という趣旨の茶会でしたが、マサカの大雨!


 

設えた野点席を断念せざるをえない状況でしたが、常安軒の八畳間に席を移し、それはそれで春から夏へ、平成から令和へ、という新しい季節を開く茶会になったかと思います。

大変な雨の中、お運びくださったみなさま、本当にありがとうございます!

 

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軸は奈良大徳寺松源院の泉田宗健さま。2012年に大徳寺第五百三十世住持となられました。私の先生が茶室を啓いた際、同じ立花大亀御老師につかれた縁でいただいた、大事な大事な軸をお借りしたもの。

炉から風炉へと移り変わる茶席には「関」の文字が掛けられるのが一般的ですが、こちらは「開」ひらく、の文字となります。

 

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お花は、各お席にすばらしいお花を生けてくださったなな艸松原尚代さんによる、宝庵の周りに咲いている「時のもの」。イヌビワ、ドウダンツツジ、カキドオシ、ヒメウツギシモツケ、ゴールドフレーム、カンゾウ、シダ、紫陽花。

花入は今回の主役、鎌倉彫の茶箱を制作くださった後藤久慶さんの手による竹の花器。漆がかけてあります。オトシは後藤さんの「もも福」ユニットでの制作。

 

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香合はタイのマンゴスチン。草花つながり。これだけが私の私物 笑

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外は大雨でも、茶席では晩春から初夏へと移り変わる野に遊ぶ心地で。。

 

そしてこの席で初披露させていただいたのが、鎌倉彫による「流水」の茶箱一式です。

 

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秋田の森吉山やオーストラリアのタスマニアアメリカのポートランドなどに茶箱を連れて行き、小さなお茶会を開いているうちに、自分の納得いく茶箱といっしょに旅したいと思うようになりました。

母が持っていた二つの茶箱はひとつは蒔絵、ひとつは鎌倉彫でした。

蒔絵はきれいですが、お点前の時に棗や茶筅を置くのにあまり向いていないのではないか、そしてバックパッカーのようにリュックの中に入れて持ち歩くには華奢すぎる。

(実際タスマニアからの帰路で蓋が割れて悲しい思いをしました。。)

 母の鎌倉彫の茶箱は松竹梅の意匠の「いかにもお土産風」で、普段使いには良いですが、せっかくなら自分好みの茶箱が欲しいと、以前からご家族ぐるみで親しくさせていただいていた鎌倉仏師二十九世孫、後藤久慶さんにご相談して苦節1年半、先週完成したのが、この「流水」茶箱です。

#この茶箱が完成するまでの超越絶後の紆余曲折話は別途書きたいと思います

 

最初のお席には塗師の後藤さん(偶然同性)もいらしてくださって、貴重なお話を伺うことができました。

 

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風炉の中に収まっているのは、モンベルで購入したジェットボイル。

急遽野点席から持ち込みました。

極寒の森吉山で、このジェットボイルで急速にお湯を沸かしあたたかいカップヌードルをすすっている山男の姿が羨ましすぎて、遂にこの機会に手に入れました。

怪我の功名、なかなか野趣溢れる趣向になったのでは。。。

 

そして、こちらが野点のお菓子、ツクシです。

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北鎌倉で摘んだツクシを砂糖で煮込みました。

柑橘類の皮のお菓子を作るイメージ、と言えば理解していただけるでしょうか。ほんのりホロ苦い春の味がして私は大好きです。

 

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こちらも先生からの直伝。ツクシ摘みには、松原さんや後藤さんの奥様、子供たちにも協力していただきました。

菓子器は、後藤さんのおじい様が作成されたもの。柏の銘々皿です。

こんな型が残っています。

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肝心のお点前(「花」)の写真が全く私の手元にないので、お客様を捜索して見つかり次第アップしたいと思います。

野点席(移設)の他に、花月風の花遊び、オプションの一畳台目の夢想庵での濃茶席がありますので、こちらは #2 で。

 

マボロシ野点席基礎部分。。

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敷物もチクチク作ったのに!( ;  ; )

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yumi-kuroda.hateblo.jp

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北鎌倉: 雪介 宗雪 あったか雪見茶会 #2

北鎌倉 宝庵での「雪介 宗雪 あったか雪見茶会」の後編です。
 
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ここでは八畳間の設えのご紹介。
 
床の間には、宝庵所有の軸を掛けましたが、水桶の「梅」は、この朝に鎌倉駅前の「鎌倉市農協連即売所」で買い求めたものです。
 
 
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入口の机にいきなり梅が一抱えバケツに放り込まれていて、一気に気持ちMAXに上がりました。
「北鎌倉はまだ一輪、二輪でしたのに」と話しかけると「神奈川の南はもう満開だよ! さっきまで紅もあったんだけど、みんな持ってっちゃった」と農家さんらしいおばさま。
そうか、紅白であったのかー
残念ー 
紅白梅図ができたのに。。
まだ7時過ぎだったのに、先客がいらっしゃったとは。
 
とは言いながら鎌倉野菜もたくさんあって、昨日東急ストアでだいたい揃えてはいたんだけれど、日本画のモデルみたいなカブを購入。
 
朝イチの駅前で新鮮地元野菜が手に入るなんて、なんて素敵なの!
とほとんど勝利した気分で(何に勝利したかは置いといて)北鎌倉に向かいました。
 
そして梅の花は、雪介さんの手で床の間へ。
こぼれ梅がいい感じです。

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待合の四畳半から、この八畳間でお炭と点心で中立ちになります。
 
あったか茶会、ということでお菓子は蒸し饅頭、その前の点心も全部蒸しちゃおう!
と、北鎌倉駅前の「円」さんのアナゴの蒸し寿司、お椀は蕪蒸し、もひとつおまけでトロトロ茶碗蒸し、というムシムシ大作戦を考えていたのですが、甘かった。
すべて「蒸す」という調理方法に統一したことで、まず水屋のコンロが足りません。
懐石ではなく点心なので、全て同時に出さなければならず、蒸し寿司、蕪蒸し、茶碗蒸しを同時に調理する術を用意していなかった。
料理屋じゃないし。
まさに企画倒れとはこのこと。
 
茶碗蒸しは泣く泣くあきらめ、蒸し寿司は蒸したものから順にカラの電気ポットの中で保温。電気ポットって凄いな、これが臨機応変、人類の叡智ブリコラージユってことか。
とお待たせすること小一時間。
 
ようやく点心が皆様の前へ。
 
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社中の先輩からいただいた手作りのゆべしに朝イチで購入したカブの薄切りを合わせてお酒のつまみとしました。
 

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そしてお菓子は、前回と同じく kuu さんにお願いしたホカホカ蒸し饅頭。
餡は紫芋です。
雪の焼印を押していただきました♪
菓子器は、漆塗りのお花見用手桶です。
 
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ここで中立です。
夢想庵は、一畳台目のため、お客様は3名でいっぱいいっぱいです。
4名は結構無理。
なので、5名を2グループに分け、それぞれの席にホストの私たちも交代でちょっとだけ入れてもらうことにしました。
 
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お軸は、鴻池朋子さんからいただいた2010年のグリーティングカード
カードというか色紙ですけど。
お茶会に使ったことを報告したら、次のようなお返事をいただきました。
素敵な茶会のお写真ありがとうございます。この作品はワテラスとは関係なく(時期はワテラスの設置時期と重なりますが)確か震災後の年末のグリーティング用に描いたもので、狼の体の中にも津波が描かれてたと思いますよ。こうしてお軸になって嬉しいです。何をみなさん語るのか、茶会の美術鑑賞は手と口と様々な感覚機関を使うからいいですね新しい物語がどんどん生まれそう。鴻池
 
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オオカミの体の中に津波が??
あー 左上の尻尾の上ですね。
これは津波だったのか!
平成でいちばん衝撃的な出来事だったと思いますが、迂闊にもご説明しそびれました。
しかし、そういう意味では無意識にこの色紙を選んだのかも。。
 
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お花は、四畳半と同じで宝庵でご一緒の島田先生からいただいた卜半椿。
一輪でものすごくチカラがあるので、本当にありがたかったです。
かざった香合は、母の持ち物の獅子。実家の水屋に何気なく置いてあったのですが、お正月っぽいので借りて来ました。
鴻池さんのオオカミとも合ってるので、これも出会いだけど良かったな。
 
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お茶碗は一席目は京都の津田友子さんの白楽。
雲が描いてあります。ちょっと物語っぽい。とてもかろやかで今回初使いでした。白だし、雲だし、夢想庵にもとても合ってました。
そして、二席目も同じお茶碗で差し上げようとしたら、なんと津田さんの白楽、割れてしまったのです!
びっくり。
今回、いろいろなことが起こります。
が、ショックを受けていても仕方がないので、薄茶用に持って来ていた、イギリスの有名な陶芸家、スティーヴ・ハリソンの塩釉薬のボウルを代役に。
二席目のお客様の中に、スティーヴのお茶碗、楽しみにしていた前回水屋でお手伝いしてくれた方がいたので、それもありかと思いまして。
 
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茶入は鶴首。これも母の持ち物で、新年ということで。期せずしてオオカミ、獅子、鶴というなんとなく神様やおめでたいっぽい動物の組合せになりました。
 
茶杓は会社の茶道部茶杓削り教室をやった時に私が途中まで削ったものを、雪介さんにさらに削ってもらったもの。
「初雪」という銘だそうです。
 

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あ、水差しは菓子器と同じです。
真の手桶っぽく見立てていただければ!
 
二席終わると既に終了予定の15時。
この後は再び八畳間でみんなで花月を楽しむ!
という趣向を考えていたのですが、次の予定がある方もあり、残られる方々とカジュアルに薄茶で懇談。内輪ということもあり、既に車座。笑
 
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お菓子は鎌倉のダンデライオンと京都の亀屋長良コラボの和三盆茗荷谷「一幸庵」の「雪つぶて」。雪つぶては名前もいいけど、大徳寺納豆がアクセントで入っていてとても奥深い。雪合戦の雪玉の中心に「小石入れちゃいけません!」って言われた小石がきっと大徳寺納豆。どちらも前にいただいたことがあるもので、何かいろいろな人に助けられてこのお茶会は成り立っている、と今回もしみじみ思います。
 
 
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1時間も押しちゃって、谷戸には夕闇迫る逢魔どきみたいな感じになり、本当にギリギリ感満載でしたが「みんなであったかく楽しく過ごす」という命題はクリアできた感じだったので、終わりよければ全て良し!
 
次は4月27日(土)平成最後のゴールデンウイーク初日の予定です。
スタッフ、お客様、どちらも大歓迎です。また良き春にお会いしましょう。
 

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北鎌倉: 雪介 宗雪 あったか雪見茶会 #1

雪です。都内平野部でも5センチの積雪が予想されるとのこと。

平成最大の寒波が平成最後の年にやってくるという、今生天皇、もってる感じ満載の2月。
 
北鎌倉、宝庵もこんな感じ。
 
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美しい!
 
ということで10月に行った「南窓 宗雪 ジャングル月見茶会」のブログも書き終わらないうちに、次の茶会がやってきてしまいました(>﹏<)
 
今回は、前回の茶会があまりに大変過ぎて、「順番にお席に入りましょう」と約束していたスタッフの皆さまが全く茶席に入れなかったことへのリベンジ、いえ慰労のための一席だけのミニお茶事です。
 
題して「雪介 宗雪 あったか雪見茶会」
 
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デザインは、旧ニフティでデザイン周りの統括をやっていた瀬津勇人さんです。早くてうまくて最高。
 
当日の1月27日は雪にこそならなかったものの寒波に見舞われ、寒いけど日本晴れの好日でした。
 
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浄智寺への参道脇にあるお家の満開の蝋梅の香りに迎えられ、気分は上々。
 
待合には雪介さんが自宅から運んで来た火鉢。富山高岡製の銅器とのこと。
 
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今回は雪の白、炭の黒、火の赤がテーマです。
お迎えする煙草盆は、赤と黒の漆塗りの盆に江戸中期の染付蕎麦猪口、灰吹きはポートランドでミニ茶会をやったお庭で拾った竹です。この姿のまま、私を待ってたみたいに地面に落ちてました。
植物は検疫でダメな気がしますが、松ぼっくりなんかもシチリアから拾って来ました。シンデレラのお父さんが還らぬ旅に出た時のお土産がハシバミの枝だったことがとても印象的で、旅に出たら押し花とか出会った植物を何かしら自分へのお土産にしています。
 
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床は海野貴彦さんの「無限大」のペインティングに、宝庵メンバーの島田先生にいただいた水仙
 
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海野貴彦さんは東京出身ながら松山に移住して拠点として活動されてるアーティストです。同じパーツを緻密に組合せて「∞」を二次元ながら立体的に表現しているのがとっても宇宙的で私の中では勝手に「2001年宇宙の旅」のモノリスのイメージがあるので、新年に良いかなー と思いました。
ご本人は「グラマラス」とおっしゃっていた。グラマラスな一年になりますように!
 
そしてこの四畳半で、再び南窓さんに焙じ茶を出していただきました。
 
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本当は汲み出しの湯のみを借用するだけと思っていたのですが、「裏で入れるのなら一煎差し上げても。。」というご厚意に甘えてしまいました。
水屋で片手鍋を無理やりホウロク代わりに焙煎してもらい、お席でのお迎えもお任せ。(5客のうちのお一人だったのですが。。)
お道具も素敵だったので、後でアップします。本当にありがとう。
 
そして八畳間に移動していよいよお炭!
です。
 
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今回のメインテーマ「炭点前」は、江戸千家の雪介さんこと中川創介さんです。
 
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江戸千家は、裏千家とは炭の組み方も違い、枝炭の扱いも違うそうです。
まず、割ギッチョが2つ必要ということを知らず、慌てて夢想庵利用のものを流用しました。釜敷きも紙じゃないの??
私はこの間、水屋で点心の準備をしていたので江戸千家炭点前を見られずとても残念でした。
 
そしてお香はなんとエチオピアの乳香!
 
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江戸千家の秘儀。。。ということではなく、先日エチオピアのコーヒーセレモニーを宝庵で受ける機会があり、その際にいただいた乳香を焚いてみたとのことでした。
 
モクモクしてすごかったらしい。
 
そして乳香って「フランキンセンス」だったのですね!
ニールズヤードでいちばん高価なエッセンスがフランキンセンス(という俗な認識)。蒸留した精油と樹液の乳香とは違うものでしょうが、今回のものは「グリーンの爽やかな香りがした」「異界の入口みたいでワクワクした」との感想をいただきました。リラクゼーションや瞑想にも効果あるみたいで、良かったです。
 
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桃の香合は私の大学時代からの友人のお母様の形見。
表千家ということで流派は違ったのですが、ある晴れた日に主のいなくなった千葉のご実家へ友人と一緒に出かけ、たくさんのお道具の中からいくつか選ばせていただきました。
ようやく陽の目を見ることができて、なんだかホッとしました。
 
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ということで、ドタバタの中で兎にも角にもお炭まで無事に終わり、これからお椀と点心、そしていよいよ夢想庵でのお濃茶です。
 
続きは後編へ!
 
 
 

北鎌倉:南窓 宗雪 ジャングル月見茶会

宗雪です。1年ぶりの更新です! 

アメリカはポートランド小さなお茶会を開いたりしたのですが(最近大人気なオレゴン州ポートランドは本当に素敵なところでした。その話はまたあらためて)ようやく北鎌倉で念願の「ジャングル茶会」を催すことができました。
本日はそのご報告です。
 
まずは、北鎌倉のお話から。
 
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北鎌倉。もちろん鎌倉は日本の観光地として有名な土地ですが、特に北鎌倉は世界に聞こえた巨匠、小津安二郎監督のいわゆる「紀子三部作」が大好きな私にとって、聖地とも言える土地です。
 
紀子三部作というのは、彼女こそ日本映画史上最強の美女、原節子さんが「紀子」という共通の名前で主人公を演じた『晩春』『麦秋』『東京物語』の三作のことで、最初の二本はいずれも北鎌倉が舞台となっています。
今は亡き銀座の並木座で、私はこの三部作と出会いました。
 
北鎌倉駅から横須賀線に揺られながら笠智衆演じる大学教授の父親と東京駅に向かう『晩春』での紀子。
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未来の旦那様と通勤電車を待つ北鎌倉駅で読書の感想を語り合う『麦秋』の紀子。
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その北鎌倉駅から徒歩10分、鎌倉五大名刹のひとつ浄智寺があります。
小津安二郎監督がその敷地内に居を構えたこともあるというまさに縁深き土地!
 
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この浄智寺の脇道をかつて小津監督も行き来していたと考えるだけで胸熱です。
そして今年2018年4月より、その浄智寺谷戸にある本格的茶会スペース「宝庵」が一般開放されることになりました。
文人ジャーナリスト関口泰氏が、
昭和9(1934)年に建築。設計は、戦前日本におけるモダニズム建築運動リーダーの山口文象氏。
数奇屋建築には8畳と4畳半の茶室が、そして特筆すべきは1畳台目の離れの茶室「夢窓庵」です。
 
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 京都の高台寺にある「遺芳庵」の逆写しで(遺芳庵は逆勝手)丸い大きな窓が特徴です。

一畳台目(いちじょうだいめ)は、千利休が二畳敷きを切り取って作ったのが初めと言われる、究極の茶室。

茶の点前に必要な台目の道具畳と、客が座るのに必要な一畳だけにまで切り詰めた、茶室の中では最も狭いものです。亭主の他に、客は3名が精一杯。

私の好きな利休をテーマとした小説に井上靖の『本覺坊遺文』があります。利休の弟子、本覺坊を通して利休自死の謎に迫ろうとする井上靖さん晩年の傑作です。今をときめく安藤サクラさんのお父様、奥田瑛二さんが利休を演じた熊井啓監督の映画をご覧になった方もいらっしゃるでしょう。

映画にそのシーンがあったかどうかは不明なのですが(おそらくあったでしょう)、師利休の最後の点前を見るために、この2畳しかない茶室に次々と武士や茶人たちが入っていく場面があります。家康、利家、紹鴎、有楽、光秀、山上宗二。。生きている人も既に戦場で果てた人も入り乱れ、何十名となく。。

そんなことがあろうはずがないのですが、そんなことも可能かと思えるような不思議な空間。それが一畳台目です。

この一畳台目でお点前ができる!

それだけでとても幸せな気持ちになります。

今回、濃茶をこの「夢窓庵」で点てさせていただいた(ついそう言いたくなってしまう!)そのしつらえが、こちらです。

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 ここに至るまで、かなりの試行錯誤がありました。

お道具だてなど、詳細はまた後ほど。 

Tasmania: Alice's Wonderland #3

オーストラリアはタスマニアでの「不思議の国のアリス」がテーマのお茶会。今回で完結です。

 

亭主: 黒田宗雪

半東: 鴻池朋子

水屋: 東海林裕子

 

正客: Danielle 

次客: Dianne

連客: Jennyfer、Jenny、Gillian、Shirley、Elizabeth

詰め:村井まや子

 

茶箱は丈夫な鎌倉彫のやつ持って行こうかなぁと思ったのですが、綺麗サビの方が良かろうと思って塗りにしたところ、日本に着いたらフタの横部分が割れてしまっていて若干ショック。まあ、トランクではなく機動性重視でリュックのバックパッカースタイルで行ったのが敗因ですかね。山にも持って行くので、満員電車の100kg圧にも耐えるパナソニックレッツノート並の耐久性が欲しいところ。フタも棗やら茶碗も載るので、塗りや蒔絵は向いてないと思うんですよね。桐、杉、桑の木地はシンプルで良いなぁ。

 

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話が逸れました。

 

「雪」のお点前は、お盆が必要ないこと、茶碗も棗も仕覆に入っているところが海外のお点前ではシンプルで華やかで良いんじゃないかなぁ、と個人的に思っています。私の先生は、2碗点てられるので「和敬」も良いんじゃないかとアドバイスくださいました。

 

箱にセットした主茶碗は、鎌倉の後藤慶大さん作の竹の節で作られた茶碗。軽くて割れなくて私は気に入っているのですが、私の先生にお見せしたところ「竹でできたお茶碗なんてありえない」

 

(๑ↀᆺↀ๑)

 

なのでもっぱら鎌倉彫の箱とセットで使っているのですが、今回万が一道中で割れると困るので、後藤さんのお茶碗にしました。正面もわかりやすいです。

 

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一碗を点てたところでさっそく正客のDanielle からの質問。

「なぜ正客だけ特別な茶碗で飲めるのか」

 

そうだよなー

特に今回は茶碗をお客様分パッキングするわけにもいかなかったので、各々「不思議の国のアリスのテーマに合うものをお持ち寄り」というポトラック方式にしたこともあり、正客の特別感は際立っておりました。

 

「正客はゲストの代表」ということは、冒頭に伝えてはいたけれど、本来お茶席の中ではみな平等というポリシーとは反していますよね。濃茶では「一碗を共にする」ということで担保されてるわけですが、薄茶ではそうもいかない。私の先生は社中が集まる初釜では相客すべてにいろいろ趣向を凝らした茶碗でもてなされていて、やはり回し飲む濃茶はともかく、薄茶は亭主側がひとりひとり気を遣わなくてはダメだなぁ、とあらためて思いました。

 

あと、衝撃だった質問は「男性は茶道をやらないのか」

 

そうですよねー

裏千家のお家元や大宗匠はそれは海外でのデモンストレーションを盛んにやられていますが、それを見る人はほんの一部。

ほとんどの「お茶」のイメージはキモノ姿の女性もしくは芸妓さんがお茶を点てている姿だと思います。

 

本来、茶道は男性のみ行うもので、女性が増えたのは日清日露戦争後に未亡人の身が立つように、政府が各家元に女性が茶道教授になることを認めさせたからだと聞きます。

 

きっかけはそうだとしても、確かに現在茶道を嗜む男性は圧倒的に少ない。私のまわりでもデザイナー、建築関係とある程度美意識の高い男性に限られます。

 

政財界の要人が競って茶道具を集めていた時代があったとは夢のよう。

さきほどご紹介した「和敬点」のお点前も、海軍のために淡々斎がご考案されたものだと聞きます。

 

現在の茶道に女性が多い理由は説明できますが、なぜ男性がやらなくなったのかは私にもわからない、としか答えられませんでした。非常に残念なことだと思います。禅が根本にあり、建築、書、歌、絵、花、香、食、陶芸、着物と全ての日本文化を学ぶことのできるお茶。本当にもったいないなぁ。こういう象徴性の極めて高い芸術表現は男性にぴったりなのに。

 

そして、今回「不思議の国のアリス」をテーマに行ったお茶会は、実は「各人の物語を針と糸を使ってテーブルランナーを制作する」という極めて女性的なプロジェクトの展示会のデモンストレーションとして開かれたものでした。

 

お軸は、窓に書かれた鴻池朋子さんによる「鳥」。

鳥は天と地を行き来する天使のような存在で、そして針と糸という道具も布の表と裏を行き来するとても風変わりなメディアであると。

 

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以下は、この「鳥」の「お軸」を描いた理由について、鴻池さんが英語で用意していたスピーチの内容です。

 

Needles, thread, and cloth are indeed strange media.

Sewing is clearly different from drawing something on paper. Drawings are made by working a pencil or brush on the surface of a piece of paper and leave a mark only on the surface of that paper. In the case of a table runner, the needle pierces the surface of the cloth and is pulled through the back, leaving a loop of thread. The needle then passes through the cloth again and returns to the front. It is as if these tools are teaching us that the world, unlike a piece of paper, has a front, middle, back, and depth. The thread marks the course taken by the needle in the form of a stitch. But, if the thread is cut with scissors, the thread easily slides out of the cloth like a snake, and the trace disappears as if it had never been there. It seems to me that these characteristics of the media used for table runners are also important.

Tomoko Konoike

 

針、糸、布は実に奇妙なメディアです。

裁縫は紙の上に何かを描くこととは明らかに異なります。 絵画は、紙の表面に鉛筆または刷毛を使用し、その紙の表面にのみ跡を残すことによって行われます。 テーブルランナーの場合、針は布の表面を突き刺し、引っ張られ、裏には糸のループが残ります。 針は再び布を通り、表に戻ります。 それは、これらの道具が、紙とは違って、世界が表、中、裏、深さを持っていることを教えているかのようです。 糸は、針によって捉えられたコースをステッチの形で残します。 しかし、糸がはさみで切断されると、糸は蛇のように布から滑り落ちやすくなり、まるでそこにいなかったかのように跡が消えます。 テーブルランナーに使用されるメディアのこれらの特性も、重要であると私には思われます。

鴻池朋子

 

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上の秋田在住のアーティスト、保坂剛志さんのテーブルランナーの作品は、実は裏です。
「裏がまた面白い」と鴻池さんは言ってました。
 
表と裏を自由に行き来する。
 
井上靖が利休について書いた『本覺坊遺文』という小説に、利休がいる2畳の茶室の中にひっきりなしに武人たちが入っていくのを弟子の本覺坊が目撃する場面があります。あんな大人数が狭い茶室の中に入りきれるはずがない・・・あれは死んでいった、もしくはこれから死にいく武人たちなのではあるまいか・・・
 
お茶という装置は「異界」に入っていくためのひとつのメディアだと思います。
女性は主に現実に生きているので、茶室の話題がついダイエットや噂話ばかりになってしまう傾向がありますが(笑)、私はある意味夢見がちでもあるので、茶室の中では現実とは違った世界を現出させたいと願っています。
 
それではまた。
 
このお茶会の経緯はこちらで。