北鎌倉: 雪介 宗雪 あったか雪見茶会 #2
素敵な茶会のお写真ありがとうございます。この作品はワテラスとは関係なく( 鴻池時期はワテラスの設置時期と重なりますが) 確か震災後の年末のグリーティング用に描いたもので、 狼の体の中にも津波が描かれてたと思いますよ。 こうしてお軸になって嬉しいです。何をみなさん語るのか、 茶会の美術鑑賞は手と口と様々な感覚機関を使うからいいですね新 しい物語がどんどん生まれそう。
北鎌倉: 雪介 宗雪 あったか雪見茶会 #1
雪です。都内平野部でも5センチの積雪が予想されるとのこと。
北鎌倉:南窓 宗雪 ジャングル月見茶会
宗雪です。1年ぶりの更新です!
文人ジャーナリスト関口泰氏が、昭和9(1934)年に建築。設計は、戦前日本におけるモダニズム建築運動リーダーの山口文象氏。
京都の高台寺にある「遺芳庵」の逆写しで(遺芳庵は逆勝手)丸い大きな窓が特徴です。
一畳台目(いちじょうだいめ)は、千利休が二畳敷きを切り取って作ったのが初めと言われる、究極の茶室。
茶の点前に必要な台目の道具畳と、客が座るのに必要な一畳だけにまで切り詰めた、茶室の中では最も狭いものです。亭主の他に、客は3名が精一杯。
私の好きな利休をテーマとした小説に井上靖の『本覺坊遺文』があります。利休の弟子、本覺坊を通して利休自死の謎に迫ろうとする井上靖さん晩年の傑作です。今をときめく安藤サクラさんのお父様、奥田瑛二さんが利休を演じた熊井啓監督の映画をご覧になった方もいらっしゃるでしょう。
映画にそのシーンがあったかどうかは不明なのですが(おそらくあったでしょう)、師利休の最後の点前を見るために、この2畳しかない茶室に次々と武士や茶人たちが入っていく場面があります。家康、利家、紹鴎、有楽、光秀、山上宗二。。生きている人も既に戦場で果てた人も入り乱れ、何十名となく。。
そんなことがあろうはずがないのですが、そんなことも可能かと思えるような不思議な空間。それが一畳台目です。
この一畳台目でお点前ができる!
それだけでとても幸せな気持ちになります。
今回、濃茶をこの「夢窓庵」で点てさせていただいた(ついそう言いたくなってしまう!)そのしつらえが、こちらです。
ここに至るまで、かなりの試行錯誤がありました。
お道具だてなど、詳細はまた後ほど。
Tasmania: Alice's Wonderland #3
オーストラリアはタスマニアでの「不思議の国のアリス」がテーマのお茶会。今回で完結です。
亭主: 黒田宗雪
半東: 鴻池朋子
水屋: 東海林裕子
正客: Danielle
次客: Dianne
連客: Jennyfer、Jenny、Gillian、Shirley、Elizabeth
詰め:村井まや子
茶箱は丈夫な鎌倉彫のやつ持って行こうかなぁと思ったのですが、綺麗サビの方が良かろうと思って塗りにしたところ、日本に着いたらフタの横部分が割れてしまっていて若干ショック。まあ、トランクではなく機動性重視でリュックのバックパッカースタイルで行ったのが敗因ですかね。山にも持って行くので、満員電車の100kg圧にも耐えるパナソニックのレッツノート並の耐久性が欲しいところ。フタも棗やら茶碗も載るので、塗りや蒔絵は向いてないと思うんですよね。桐、杉、桑の木地はシンプルで良いなぁ。
話が逸れました。
「雪」のお点前は、お盆が必要ないこと、茶碗も棗も仕覆に入っているところが海外のお点前ではシンプルで華やかで良いんじゃないかなぁ、と個人的に思っています。私の先生は、2碗点てられるので「和敬」も良いんじゃないかとアドバイスくださいました。
箱にセットした主茶碗は、鎌倉の後藤慶大さん作の竹の節で作られた茶碗。軽くて割れなくて私は気に入っているのですが、私の先生にお見せしたところ「竹でできたお茶碗なんてありえない」
(๑ↀᆺↀ๑)
なのでもっぱら鎌倉彫の箱とセットで使っているのですが、今回万が一道中で割れると困るので、後藤さんのお茶碗にしました。正面もわかりやすいです。
一碗を点てたところでさっそく正客のDanielle からの質問。
「なぜ正客だけ特別な茶碗で飲めるのか」
そうだよなー
特に今回は茶碗をお客様分パッキングするわけにもいかなかったので、各々「不思議の国のアリスのテーマに合うものをお持ち寄り」というポトラック方式にしたこともあり、正客の特別感は際立っておりました。
「正客はゲストの代表」ということは、冒頭に伝えてはいたけれど、本来お茶席の中ではみな平等というポリシーとは反していますよね。濃茶では「一碗を共にする」ということで担保されてるわけですが、薄茶ではそうもいかない。私の先生は社中が集まる初釜では相客すべてにいろいろ趣向を凝らした茶碗でもてなされていて、やはり回し飲む濃茶はともかく、薄茶は亭主側がひとりひとり気を遣わなくてはダメだなぁ、とあらためて思いました。
あと、衝撃だった質問は「男性は茶道をやらないのか」
そうですよねー
裏千家のお家元や大宗匠はそれは海外でのデモンストレーションを盛んにやられていますが、それを見る人はほんの一部。
ほとんどの「お茶」のイメージはキモノ姿の女性もしくは芸妓さんがお茶を点てている姿だと思います。
本来、茶道は男性のみ行うもので、女性が増えたのは日清日露戦争後に未亡人の身が立つように、政府が各家元に女性が茶道教授になることを認めさせたからだと聞きます。
きっかけはそうだとしても、確かに現在茶道を嗜む男性は圧倒的に少ない。私のまわりでもデザイナー、建築関係とある程度美意識の高い男性に限られます。
政財界の要人が競って茶道具を集めていた時代があったとは夢のよう。
さきほどご紹介した「和敬点」のお点前も、海軍のために淡々斎がご考案されたものだと聞きます。
現在の茶道に女性が多い理由は説明できますが、なぜ男性がやらなくなったのかは私にもわからない、としか答えられませんでした。非常に残念なことだと思います。禅が根本にあり、建築、書、歌、絵、花、香、食、陶芸、着物と全ての日本文化を学ぶことのできるお茶。本当にもったいないなぁ。こういう象徴性の極めて高い芸術表現は男性にぴったりなのに。
そして、今回「不思議の国のアリス」をテーマに行ったお茶会は、実は「各人の物語を針と糸を使ってテーブルランナーを制作する」という極めて女性的なプロジェクトの展示会のデモンストレーションとして開かれたものでした。
お軸は、窓に書かれた鴻池朋子さんによる「鳥」。
鳥は天と地を行き来する天使のような存在で、そして針と糸という道具も布の表と裏を行き来するとても風変わりなメディアであると。
以下は、この「鳥」の「お軸」を描いた理由について、鴻池さんが英語で用意していたスピーチの内容です。
Needles, thread, and cloth are indeed strange media.
Sewing is clearly different from drawing something on paper. Drawings are made by working a pencil or brush on the surface of a piece of paper and leave a mark only on the surface of that paper. In the case of a table runner, the needle pierces the surface of the cloth and is pulled through the back, leaving a loop of thread. The needle then passes through the cloth again and returns to the front. It is as if these tools are teaching us that the world, unlike a piece of paper, has a front, middle, back, and depth. The thread marks the course taken by the needle in the form of a stitch. But, if the thread is cut with scissors, the thread easily slides out of the cloth like a snake, and the trace disappears as if it had never been there. It seems to me that these characteristics of the media used for table runners are also important.
Tomoko Konoike
針、糸、布は実に奇妙なメディアです。
裁縫は紙の上に何かを描くこととは明らかに異なります。 絵画は、紙の表面に鉛筆または刷毛を使用し、その紙の表面にのみ跡を残すことによって行われます。 テーブルランナーの場合、針は布の表面を突き刺し、引っ張られ、裏には糸のループが残ります。 針は再び布を通り、表に戻ります。 それは、これらの道具が、紙とは違って、世界が表、中、裏、深さを持っていることを教えているかのようです。 糸は、針によって捉えられたコースをステッチの形で残します。 しかし、糸がはさみで切断されると、糸は蛇のように布から滑り落ちやすくなり、まるでそこにいなかったかのように跡が消えます。 テーブルランナーに使用されるメディアのこれらの特性も、重要であると私には思われます。
Tasmania: Alice's Wonderland #2
こんにちは、宗雪です。
Tasmania: Alice's Wonderland #1
こんにちは。宗雪と申します。アーティストの鴻池朋子さんの金沢21世紀美術館での一風変わったお茶会のお手伝いをさせていただいて以来、お茶室を離れたいろいろな空間で、多少調子っぱずれなお茶会を開いています。いろいろな場所で、一期一会のかけがえのないひと時を過ごせればと思っています。
今回は2月にタスマニアで開いた「アリスの不思議の国」茶会のご報告。